「今年こそは部屋を暖かくしたい!」 そう意気込みつつ、どの対策が効果的かわからず第一歩が踏み出せない。もしくはネットで紹介されている断熱対策をやってみたけど、なぜか部屋が寒いまま…。
本記事はそんな経験をしている方にぜひ読んでいただきたい内容です。この記事では、ネットやSNSでよく紹介されている中空ポリカやマスカーテープを使った断熱対策の失敗例を元に、どんな断熱DIYが効果的かを理論的に検証します。
まず断熱の正否を分ける理論的な基礎知識を解説し、それに基づいてなぜそれらのDIYが無意味なのか、どうすべきだったのかを解説します。
感覚だけのDIYは今日で卒業し、無駄な出費と労力をセーブして、本当に効果のある対策(二重窓)への第一歩を踏み出しましょう。
重要な基礎知識:U値・サッシ・断熱材の厚み
失敗の理由を理解するために、まずは断熱を語るうえで欠かせない3つの基礎知識について解説します。この章を理解すれば、どのDIYが効果的で、どれが無意味かを自分で判断できるようになります。
U値(熱貫流率):熱の流れやすさを示す数値
U値とは、「熱がどれくらい貫通して流れていくか」を表す数値です。 U値の単位は一般にW/㎡Kで表されますが、単位自体を覚える必要はありません。とにかく理解してほしいことは、数値が小さいほど優秀(断熱性が高い)ということ。
※本記事では単位(W/㎡K)を省略して数値のみで記載します。

図1は、経済産業省が定めている窓の断熱性能評価区分です1。U値が4.7より大きければ評価にすら値しないレベルです。DIYの目標は、少なくとも星1つのU値4.7以下にすることで、より高性能を目指すなら星3つや4つのU値2程度に近づけることです。
下記が窓の種類ごとの大体のU値になります2。
- 古い窓(単板ガラス+アルミサッシ): U値 約6.3(熱がダダ漏れの状態)
- 最も普及している窓(2023年新築)※(Low-E断熱性ガス入り二層複層ガラス+アルミサッシ): U値 約3(熱をそこそこ逃がさない状態)
- 高性能な窓(Low-E断熱性ガス入り三層複層ガラス+樹脂サッシ): U値 約1.4(熱を逃がさない状態)
この記事をご覧になっている方はほとんどがU値6.3の古い窓だと思いますが、図1の星0の基準を大きく上回るU値であることがわかるはずです。以下ではこの古い窓を前提として話を進めますが、複層ガラス+アルミサッシなどで断熱を考えている場合でも考え方は同じですので気にせず読み進めてください。
サッシの重要性
素材による熱の伝わりやすさには天と地ほどの差があります。 日本の住宅で一般的なアルミサッシは、断熱における最悪の敵です。 アルミの熱伝導率は、木材や樹脂(プラスチック)の約1000倍。電子機器を冷却するための部品(ヒートシンク)として使われるほど熱を伝えやすいため、冬は外の冷気を、夏は外の熱気を猛スピードで室内に運び込んでしまいます。
- 一般的なアルミサッシ: U値 7.3以上(※単板ガラスのU値は6)
- 高性能な樹脂サッシ: U値 2.0程度
アルミサッシはガラスよりもU値が高く、断熱性能を下げる主要因となります。そのため、断熱効果を得るためには、サッシの断熱対策が重要となります。
断熱材の厚みと断熱性能の関係
身近な素材で最強の断熱材は空気ですが、十分な断熱性能を発揮するには厚みが絶対に必要です。 以下のグラフを見てください。

図2は、空気層の厚みごとのU値(空気単体)を示しています。 グラフ左端、厚みが1mmの地点を見てください。U値は5.2を超えています。これは単板ガラスとほとんど変わらないレベルで熱を通すことを意味します。 断熱材として非常に優秀な空気でさえ、1mm以下の薄さではほとんど機能しないことが分かります。
さらに、この空気層を実際の窓に内窓として組み込んだ場合の全体性能(合成U値)が図3です。

たとえ空気層を作っても、その厚みが1ミリ程度であれば、窓全体のU値は5付近からほとんど下がりません。どんな断熱材を使う場合でも、数mm〜1cm以上の厚みを確保していないと有効性が極めて低いということが、このデータから分かります。
失敗例①:中空ポリカや断熱フィルムなどをガラス面だけに貼り付ける
基礎知識を踏まえた上で、よくある失敗例を見ていきましょう。 まずは、ガラス面にだけ中空ポリカや断熱フィルムなどを貼り付ける方法です。
効果は限定的(U値が1〜2程度の改善)
中空ポリカや断熱フィルムを貼ることで、ガラス部分のU値は確かに改善します(断熱フィルムでU値5.5程度、ポリカだとさらに下がります)。しかし、これで部屋が劇的に暖かくなることはありません。
最大の弱点:アルミサッシが開いたまま
ガラス面の性能を少し上げたところで、アルミサッシの影響を無視していれば効果は限定的です。 以下のグラフは、厚さ4mmの中空ポリカを用いてガラスのみを覆った場合とサッシを含めた窓全体を覆った場合のU値をシミュレーションした結果です。

青い線(ガラスのみ)は、何もしない黒い線よりは下がっていますが、オレンジの線(窓全体を覆った場合)ほどU値が下がっていません。サッシという大穴が開いたままだからです。
窓が小さいほど「無意味」化する
さらに、図4の横軸(窓の幅)に注目してください。窓の幅が狭くなるほど、青い線とオレンジの線の差が開いているのが分かります。 トイレや小窓などサイズが小さい窓ほど、窓全体に占めるサッシの面積比率が大きくなるため、ガラスだけを頑張って断熱しても効果はさらに限定的になります。
以上のように、中空ポリカや断熱フィルムをガラスのみに貼り付ける対策は、ガラス面の性能向上には役立ちますが、アルミサッシという最低の断熱性能を持っている部分を放置しているため、トータルでは限定的な効果しか得られず、U値が下がりきりません。また、結露をアルミサッシ部分に集中させるという弊害も起こりやすいです。
【例外】効果があるケース
稀にしかないケースだと思いますが、ご自宅の窓が樹脂サッシ+単板ガラスの場合、サッシはすでに断熱されているため、ガラス面の断熱強化(フィルムやポリカ貼り)だけでもほぼ同等の効果を発揮します。
失敗例②:マスカーテープなどビニールで窓全体を覆う
次に、窓全体をマスカーテープやビニールシートで覆い、内窓とするパターンを検証します。サッシも覆えるので一見良さそうですが、その効果はほぼゼロです。
効果は誤差レベル(ほぼ無意味)
マスカーテープを貼ることでU値がどれだけ改善するのでしょうか?図5は、マスカーテープを貼る前(青線)と貼った後(赤線)のU値を示しています。縦軸のスケールによく注目してください。U値の変化は0.01〜0.02程度しかありません。これは誤差レベルの違いであり、体感温度が変わることはまずありません。マスカーテープを使った断熱は、物理的に無意味であると断言できます。次にその理由を説明します。

無意味な理由1:圧倒的な「厚み不足」
マスカーテープやビニールシートの厚みは、せいぜい0.01mm〜0.1mm程度。 図2で見た通り、最高の断熱材である空気ですら1mm以下では断熱材として機能しません。ペラペラのシート1枚では、熱は伝導によって素通りしてしまうのです。
無意味な理由B:見せかけの空気層と対流
「シートと外窓の間の空間(数センチ)が断熱層になるのでは?」と思うかもしれません。しかし、テープ止め程度の施工では気密性が保てず室外側の冷気を室内に取り込んでしまいます。仮に気密性が保てたとしてもやはり断熱層としては機能しません。これは下記記事にて実証済みです。気密性と断熱性の違いについても説明していますので、そちらも合わせてご参照ください。
気密性が保てても断熱層として機能しないのは、シートと外窓の間の空気層で対流が起きるためです。対流が起きる要因は次の2つです。
- 隙間風
断熱性の低い家であれば気密性も低いことがほとんどです。仮にシートで作った内窓側の気密性が高くても、外窓の気密性は低いままです。外窓の隙間風が空気層の対流の引き起こします。 - 温度差
内窓側の断熱性がほぼゼロである以上、内窓に近いほど温度が高く、外窓に近づくに連れ温度が低くなります。空気層に生じるこの温度差によって、対流が生じます。
以上より、動かない空気層を作れない限り、その空間は断熱材として機能しないのです。同様の理由で薄い断熱カーテンなども断熱の効果はごくわずかと考えられます。
【注意】温度測定で効果があるように見えるワケ
よく動画やブログで、マスカーテープや断熱カーテンの効果検証として「内窓の内側と外側での温度測定」が行われています。「内側の方が◯℃高かった!効果あり!」という内容です。
しかし、これは断熱効果の証明にはなりません。 窓際は冷たく、部屋の中心に行くほど暖かいのは自然な温度勾配です。シートを隔てたことで測定ポイントが物理的に窓から遠ざかれば、温度が高く出るのは当然のことです。 これは単に冷たい窓からの距離が違うことによる温度差を見ているに過ぎず、窓自体の断熱性能が改善されたわけではない点に注意が必要です。
まとめ:失敗例から学ぶ本当に効果がある窓断熱DIY
今回の検証で、失敗する窓断熱DIYの理由が明らかになりました。
- 断熱材の厚みとU値の関係を無視しているから
- サッシを無視しているから
- 気密性が低く、内部で対流が起きてしまっているから
逆に言えば、これら全ての条件をクリアすれば、DIYでも劇的な断熱効果が得られます。
- 十分な断熱材の厚み(最低でも1mm以上)を確保する
- サッシごと窓全体を覆う
- 気密性を高め、空気を閉じ込める
これらを満たす方法が内窓(二重窓)の作成です。
無意味なDIYは今日で終わりにして、次こそは「本当に暖かい冬」を手に入れましょう。
- 「窓の性能表示制度に関するとりまとめ(概要)」『経済産業省』https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220620001/20220620001-a.pdf ↩︎
- 「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報 第三節 熱貫流率及び線熱貫流率」 『国立研究開発法人建築研究所』
https://www.kenken.go.jp/becc/documents/house/3-3_250401_v24_rireki.pdf
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