はじめに
夏も冬も、エアコンの効きがいまひとつ…。
そんな悩みの原因となっているのが、「窓からの熱の出入り」です。住宅における熱の損失や侵入は、窓がもっとも大きな割合を占めており、特に断熱性の低い窓を持つ賃貸物件では、冷暖房効率が大きく左右されます。
とはいえ、窓の断熱リフォームは費用も手間もかかるうえ、そもそも賃貸では現実的ではありません。
そこで今回試してみたのが、ゲルテープとマスカーテープを使った簡単な窓の断熱DIYです。窓枠を覆うように貼るだけで、冷気や熱気の出入りを軽減できるという方法で、材料費は2DKの6つの窓全部の施工で2,000円以下。窓1つあたり400円もかかりません。しかもゲルテープは跡が残りにくいため、賃貸でも安心して使用できます。
この記事では、夏に室温44度を記録する超低断熱賃貸(木造アパート最上階の角部屋)で実践した、窓断熱DIYの効果を検証しています。実体験だからこそわかる「効果があったこと」「効果がなかったこと」をまとめました。
※私が住んでいる部屋の断熱性能の低さについては、下記記事で詳しく解説していますので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。
「低コストで快適な室内環境をつくりたい」「エアコンの効率を上げて光熱費を抑えたい」とお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
断熱性と気密性の違いとは?
よく「窓断熱」や「断熱DIY」と言われます。この言葉を聞くと、なんとなく“暖かくなる”、“涼しく保てる”というイメージはあるかもしれません。
しかしその背景には、「断熱性」と「気密性」という2つの異なる性能が関わっています。今の住居環境でどのようなDIYが必要かを見極めるためには、それぞれの意味と役割をきちんと理解しておくことが大切です。
例えるなら「魔法瓶」
この2つの違いはよく魔法瓶(保温ボトル)にたとえて説明されます。
断熱性は、魔法瓶の「内側の二重構造」にあたります。熱を内外に通しにくくする仕組みで、温かい飲み物を冷めにくく、冷たい飲み物をぬるくなりにくくしてくれます。
断熱性は、魔法瓶の「内側の二重構造」にあたります。熱を内外に通しにくくする仕組みで、温かい飲み物を冷めにくく、冷たい飲み物をぬるくなりにくくしてくれます。
気密性は、「しっかり閉まったフタ」にあたります。空気の出入りを防ぐことで、外の空気が中に入り込んだり、内側の温度が急激に変化したりするのを防ぎます。
気密性は、「しっかり閉まったフタ」にあたります。空気の出入りを防ぐことで、外の空気が中に入り込んだり、内側の温度が急激に変化したりするのを防ぎます。
どちらが欠けても、飲み物の温度は長く保てません。
住居における断熱性と気密性は?
住まいも魔法瓶と同じで、断熱性と気密性はセットで考えるべきものです。
断熱性は、室内と室外のあいだで熱が移動するのを防ぐ性能です。
たとえば冬は室内の暖かい空気が逃げにくくなり、夏は外の熱が侵入しにくくなります。窓でいえば、複層ガラスや樹脂サッシがこれにあたります。DIYで薄い素材でもこの“熱のやりとり”をある程度緩やかにできれば、冷暖房効率が改善されることもあります。
気密性は隙間風のような「空気の通り道」を塞ぐ性能です。
窓やドアに微細な隙間があると、外の冷たい(または暑い)空気が室内に流れ込み、室温が安定しません。とくに冬場は、わずかなすきま風でも体感温度が大きく下がる要因になります。DIYでこの隙間を塞ぐことで、部屋全体の快適さが格段にアップすることがあります。
DIYに用いる材料と手順
材料
今回のDIYは、手軽にできて賃貸でもOKな方法として、Youtubeで紹介されていた窓の簡易断熱法を参考にしました。
参考にした動画
材料はごくシンプルで、以下の2つだけです。
手順
手順は非常に簡単です。まず窓枠を一周するように、ゲルテープを貼り付けます。その上からマスカーテープを貼って密閉します。ゲルテープからはみ出た部分や養生テープ部分は不要なので切り取って完成です。
ゲルテープは幅が2cmあるので、窓枠の幅に収まりきらないことがあります。面倒でなければ半分に切って幅1cmのゲルテープにしてもいいと思います。ゲルテープの節約にもなります。
図1が施工完了後の窓です。これはお風呂場の様子ですが、家中の窓全てで同じようにテープで密閉しました。

効果検証①:気密性の効果
窓枠をゲルテープで囲い、その上からマスカーテープで全面を覆う形にしたことで、隙間風が一切入ってこなくなりました。屋外で強風が吹いている日でも、窓の近くで風を感じることはなくなり、明らかな効果を実感しています。
特に効果を感じたのは浴室の窓です。浴室の窓は、真冬だとたとえ閉めていても冷気が入り込みやすい場所ですが、今回のDIY後はその冷たい空気の流れをまったく感じなくなりました。おかげで明らかに入浴時の体感温度が上がりました。
お風呂場に限らず、気密性の向上は、エアコン効率改善にも役立つと考えています。外からの冷気、熱気の侵入や室内の暖気、冷気の漏れを抑える効果が期待でき、結果的にエアコンの効きが良くなり、電気代の節約にもつながります。
ただし、気密性を高めすぎると換気不足になる可能性もあるため、適度な換気は忘れずに行うことが大切です。
効果検証②:断熱性の効果
気密性の改善に一定の効果が見られた一方で、断熱性については思ったほどの変化は感じられませんでした。
今回は、同じ6畳の部屋で、施工前(2024年の冬)と施工後(2025年の冬)の室温を比較しましたが、明確な温度差は見られませんでした(図2)。

今回使用したマスカーテープは、あくまで薄いビニール膜です。 空気の出入りは防げても、熱そのものを遮る性能(=断熱性)はそこまで高くないということです。
断熱性を本格的に高めたい場合は、プラダンや気泡緩衝材(いわゆるプチプチ)、発泡ウレタンシート、ポリカーボネート板(中空構造)といった、厚みがあり空気層を持つ素材を使う必要があります。
結局、やる意味はあるのか?
断熱効果が見られなかったとはいえ、気密性の向上による「体感温度の改善」には明らかな効果がありました。体感温度は、実際の気温だけでなく空気の流れや湿度、肌に触れる冷気などによっても変わります。今回のDIYは、そうした「寒さの不快感を軽減する」意味では十分価値があったと感じています。
特に、お風呂場での利用は明らかな効果があるのでオススメです。
また、気密性は低いが断熱性は高い部屋であれば、この方法でも効果が得られるかもしれません。
窓が小さければマスカーテープでなくとも、ゴミ袋などを使うこともできますし、ご自身に合った手軽な方法で試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回の記事では、賃貸物件でも手軽にできる窓の断熱DIYとして、ゲルテープとマスカーテープを使った方法を紹介しました。
施工の結果、特に「気密性」の向上によって隙間風を防ぐ効果がはっきりと感じられ、体感温度の改善に大きな効果がありました。とくにお風呂場の窓では、冷たい空気の流れをほとんど感じなくなり、入浴時の快適さが大きく向上した点が最大のポイントです。
ただし、「断熱性」を高める効果は限定的で、室温そのものを大きく変えるものではありませんでした。気密性は低いが断熱性は高い部屋であれば、この方法でも効果が得られるかもしれません。今回のDIYは特に賃貸住宅にお住まいの方で、少しでも快適な室内環境を手軽に整えたいと考えている方には、一度試してみてほしい方法です。まずは身近なところから「寒さ対策」や「エアコンの効率改善」を始めてみるのも、生活を快適にする第一歩になるかもしれません。
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